確認申請は必要なのか?
結論から言いますと、大体のマンションの大規模修繕で確認申請は必要ありません。確認申請は基本的に建物を建てる時に必要なものです。
しかし、建築基準法において「一号〜三号建築物の大規模の修繕・模様替」に定義される場合においては、修繕工事でも確認申請書類の提出が義務付けられています。
今回の記事では、確認申請とはどのような手続きなのか、実際に何をすればいいのかということから、どのような場合に「一号〜三号建築物」や「大規模の修繕・模様替」と分類されるのかについて解説していきます。将来想定している修繕計画と照らし合わせて、事前に確認申請が必要なのかを判断できるようにしておきましょう。
確認申請とは
確認申請は正式には建築確認申請と呼ばれます。内容としては、建築基準法において定められた建物の建築、改修を行う際に必要な、該当の工事計画が建築基準関連規定に則したものであることを確認するための手続きです。着工前に特定行政庁や民間の指定確認検査機関に申請を提出し、設計図書を審査して指摘部分を修正した後、建築基準法に適合すると判断されれば建築確認済証が交付され、着工が認められます。また、工事が完了した後図面通りに建築や改修が行われているかどうかを確認する「完了検査」や、自治体の定める特定の建築物に関しては工事の途中に「中間検査」を行います。
ここでは、確認申請の際に実際にすることや、費用、期間、把握しておかなければいけない注意点を解説していきます。
何をすればいいの?
建築主だと「確認申請」という単語やその意味は把握していても、実際に申請するとなると何をすればいいか分からない方が多いかと思われますが、建築主は実際には確認申請は行いません。なぜなら、検査機関の審査を通すためには建築士資格や経験が必須だからです。確認する項目として、建坪率や容積率、北側斜線規定等の数値を満たしているかどうかに加え、近年では省エネ基準などの項目も追加されています。他にも確認申請には非常に専門的な知識が必要となるので、多くの場合は建築主の代理人として設計者や建築会社が代行します。
建築主が実際にすることは、建築士に申請を依頼するだけです。建築主が確認申請を行うことも可能ですが、年間で行われる確認申請の9割以上が代理の建築士によって行われています。
どのくらいの費用や期間が必要なの?
建築主は申請は行いませんが、申請の際に必要な手数料等については建築主負担になります。細かい金額は自治体によって異なりますが、基本的に建築物の床面積によって定められています。
目安として東京都を例に挙げると、確認申請の手数料は床面積2,000㎡以内の建築物であれば50,000円以内で収まりますが、2,000㎡を超えると二桁万円になり、最高で474,000円となっています。中間、完了検査申請に関しても同程度の手数料となっています。
次にかかる期間ですが、申請には7日以内、確認済証受理まで最長で35日となっています。構造計算適合性判定が必要となる場合はさらに期間が必要となります。
このように、規模の大きい建築、改築の場合は確認申請にかなりの費用と時間がかかるので、あらかじめ申請先の自治体や検査機関に問い合わせて事前に大まかに把握しておくべきでしょう。
申請後の工事計画変更ってできるの?
確認申請後に図面を変更することはできますが、原則として「計画変更の申請」を行う必要があります。内装や電源の配置を変更する等軽微な変更であれば完了検査にて申請が可能な場合もありますが、明確な基準は定められないので基本的には変更するタイミングで申請が必要です。計画変更の申請にはさらに費用と時間がかかり、完了するまでは着工できないため、確認申請後に設計を変更することはあまりお勧めできません。
大規模修繕で、確認申請が必要な場合
冒頭でも述べましたが、主に新築、増改築工事において確認申請が必要であり、大半の大規模修繕には確認申請の必要はありません。例外として、建築基準法にて「一号〜三号建築物の大規模の修繕・模様替」と定義される修繕工事において確認申請が義務付けられています。
ここからは、「一号〜三号建築物」と「大規模の修繕・模様替」とは実際にどのように定義されているのかについて解説していきます。
1号〜3号建築物の定義
建築物は、建築基準法第六条の第一号から第四号において以下のように分類されています
・一号建築物
娯楽、医療、宿泊、教育、飲食、販売等の目的に利用される特殊建築物で、該当する用途に共する部分の床面積の合計が200㎡を超えるもの
・二号建築物
木造建築物で階数が3以上であり、又は延べ面積が500㎡、高さが13mもしくは軒の高さが9mを超えるもの
・三号建築物
木造以外の建築物で階数が2以上であり、又は延べ面積が200㎡を超えるもの
・四号建築物
一号〜三号に該当しない建築物に加えて、都市計画区域や景観法、都道府県知事が指定する区域内における建築物
以上が一号〜四号建築物の定義であり、建築工事の場合はこれら全てにおいて確認申請が必要です。修繕工事の場合においては、上記の一号〜三号建築物を「大規模の修繕・模様替」する場合に確認申請が必要となります。
大規模の修繕・模様替の定義
大規模の修繕・模様替については、建築基準法第二条の第十四、十五号において以下のように定義されています。
・大規模の修繕
建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕
・大規模の模様替
建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替
つまり修繕、模様替工事において確認申請が義務付けられる条件は、「一号〜三号建築物の主要構造部の一種以上について過半の修繕、模様替」と言い換えられます。
ここからは細かい言葉の意味について解説していきます。
主要構造部とは
主要構造部とは、建築物の構造上重要な部分の総称です。具体的には、壁、柱、床、はり、屋根又は階段を指します。構造上重要でない間仕切壁、間柱、附け柱、最下階の床、屋外階段等は除外されます。また、壁や屋根のタイル、防水シート、塗装などの塗り張り替に関しては、主要の構造でなく表面の施行なので含まれないと判断されます。
修繕とは
修繕という言葉は本記事にも多く出てきますが、その正確な定義を確認しておきます。
修繕とは、経年劣化等により構造上の性能や品質が劣化した建築物を、新築当初の水準に可能な限り戻す工事を指します。復元することが目的であるため、工事に使用される材料や形状、寸法は建築当初と同じ又は近しいものが利用されます。
建物の構造にはそれぞれに耐用年数という寿命があり、経年劣化や不具合が生じてくると資産価値や安全性が損なわれてしまうため、それを防ぐのが修繕の主な目的です。
模様替えとは
模様替えとは、経年劣化等により構造上の性能や品質が劣化した建築物を、構造や規模、機能を変えない範囲で改良する工事を指します。修繕が建築当初の状態に戻すことが目的であるのに対し、模様替えは改良を加えることが目的であるという相違点があります。具体的には、施行部分において形状や寸法は変えずに異なる材料や工法に取り替える工事を行います。
過半とは
過半については半数を超えるという意味で通常と相違ありません。過半の修繕、模様替というと、床、壁、屋根であれば全体の面積の半分以上、柱、梁、階段に関しては総本数、階ごとの階数の半分以上を工事する場合のことを指します。
確認申請が必要な大規模修繕の具体的な例
確認申請が必要な条件についてはここまで説明してきた通りです。一般的なマンションの場合木造でなく二階建て以上の場合がほとんどなので、基本的に「一号〜三号の建築物」に該当します。しかし、大規模修繕の場合主な施行内容としては外壁塗装・洗浄、防水工事、配管整備であり、先にも述べましたがこれらは主要構造部の修繕には該当しません。そのため、一般的な大規模修繕工事を行う際は確認申請は不要です。
確認申請が必要となる具体例としては、エレベーターの取り替え工事、耐震工事などがあげられます。エレベーターの全てを取り替える方式「完全撤去一括改修」や、機器の一部を残して取り替える方式「準撤去一括改修」を行う際は確認申請が必要です。また、耐震工事に関しては工事に伴って柱や梁の過半の修繕が行われる場合があり、その場合は確認申請が必要です。これに当てはまる工事を計画している場合は特に気をつけましょう。
確認申請を怠るとどうなる?
もし確認申請が必要であるのにしなかった場合、違法と判断されます。施行会社や土地の所有者が法律違反の是正責任があり、それに応じなかった場合は懲役、罰金刑に処されます。
確認申請は、新築、増改築する建物が建築基準法に適するものであり、安全性、耐久性に問題がないことを確認するという意義があるため、入居者が安心して暮らせるマンションにするためにも必ず施行会社等とコミュニケーションをとって必要かどうかを確認しておきましょう。