賃貸の大規模修繕
今回は賃貸住宅の大規模修繕についてオーナー様に向けて解説していきたいと思います。賃貸の場合はこれまでに多く取り上げてきた分譲マンションのように一人一人が所有しているものとは異なり、オーナー様が所有している賃貸経営を行う物件の大規模修繕になります。
大規模修繕の最も大きな意義はなんどもご説明させていただいてましたが、「資産価値を高める」という点です。資産価値を高めるということは、オーナー様の所有物である建物の価値を高めることはもちろん、そこに入居したい、または住み続けていきたいと思ってもらえるようにしていく工事になります。
大規模修繕工事と聞くと、建物の規模もマンションのように大きなものと捉えがちですが、あくまでも様々な細かい工事を一度に行うことが大規模修繕工事の定義です。そのため、賃貸のようなアパートにおける大規模修繕工事もとても大切なものなので、しっかりと内容の理解と意味合いを把握した上で臨むようにしていきましょう。
大規模修繕工事の基本的な内容についてしっかりと知りたい場合は、過去の記事にてくわしく説明しておりますので下記のボタンリンクよりお読みください。
賃貸とマンション
続いて、よく「賃貸とマンションの違い」についてきになる方が多いと思われますが、こちらについても解説していきたいと思います。まず初めに、賃貸=アパートというわけではありません。よく賃貸と聞くと一般的にアパートを想像してしまいがちですが、賃貸というのはあくまでも建物の経営形態のことを指します。
これまでの記事では、分譲マンションのような居住者一人一人が所有者である建物の大規模修繕工事についてお話ししてきましたが、今回の賃貸の場合は、所有者はオーナー様ということになりますので少し考え方が異なります。
以上のことを踏まえると、マンションのような大きな建物であっても賃貸経営をしている場合は、賃貸に含まれます。一軒家などで、各部屋を賃貸として経営している物件など見受けられますが、そのような場合も、居住者が家賃を支払って住んでいる以上賃貸経営にあたるので、この場合は賃貸ということになります。
ですので、今回の賃貸における大規模修繕のお話は、建物の規模感、種類に限らず賃貸物件の大規模修繕のお話になりますので、管理する立場であるオーナー様と、月々の家賃を支払いながら住まわれている居住者の方に向けた内容の記事になります。
賃貸について少し詳しく説明したところで、今回の記事が対象とする建物についてですが、今までの記事ではマンションにおける大規模修繕工事をお届けさせて頂いておりますので、アパートの大規模修繕ということで進めて行かせていただきます。そのためにも、まずは賃貸とは何なのかを知っていただく必要があったという次第です。
賃貸における工事
それでは賃貸アパートにおける大規模修繕工事の内容に入っていきたいと思います。
マンションの大規模修繕工事のときの内容はもうだいたい覚えてきているという読者の方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。それではこれまでお話しさせていただいたマンションの大規模修繕工事の内容をまずは復習していきましょう。
マンションの大規模修繕工事
・仮設工事
・下地補修工事
・タイル補修工事
・シーリング工事
・外壁塗装工事
・鉄部塗装工事
・防水工事
主に上記のような工事内容を一度に行うことが大規模修繕と呼ばれると言うことはこれまでお話しさせていただきました。では、アパートにおける大規模修繕工事の内容とはどのようなものでしょうか?マンションの大規模修繕の工事内容にある項目から一つずつ見ていきましょう。
まずは仮設工事ですが、これは建物の工事を行う上で作業員の安全面等に関わるものですので必ず行う工事になります。マンションのように大きな建物と言うわけではないので、敷地内に仮設の事務室や、用具室を作ることはありませんが、足場であったり基礎の組み立てなどを行います。
次に下地補修工事と、タイル補修工事です。この二つは建物の種類に関わらず、建物の基礎となる下地の部分と、壁面を保護しているタイルの工事になりますので、アパートの大規模修繕工事だから行わないということは決してありません。どの建物においても重要な工事の項目になるのでこの二つはアパートにおいても実施されます。
続いては、シーリング工事です。シーリングとは部材をつなぎ合わせるために使われる材料のことで、いわば接着のボンドのような役割を果たす部分です。加えてシーリングには接着の役割だけでなく、気密性を高めると言う働きがあります。そのため、しっかりとしたシーリングの改修を行うことで、部屋の遮音性や、遮熱性が高まり、年中通して誰もが暮らしやすい居住環境を作り出すことができます。こちらもマンション同様アパートにおいても重要な工事の項目になります。
では外壁塗装工事はどうでしょうか。こちらはマンションなどでは単体でも大きな規模で行われるような重要な工事ですが、アパートにおける大規模修繕でも外壁塗装工事は行われるのでしょうか。結論として、ほとんどのアパートの大規模修繕工事のタイミングで、外壁塗装工事が行われます。マンションやビル同様、外壁というのはその建物自体の美観性に最も大きく関わる部分です。いわばその建物の顔となるような部分ですので、居住者の印象や、今から入居率の向上を図ろうと考えている場合は、必須の工事内容といっても過言ではありません。
後半に差し掛かりますが、鉄部塗装工事というものを初めて知ったという方もいらっしゃるかと思われます。この鉄部というのは、その建物の鉄でできている部分のほぼ全てを指します。下地や基礎面のような鉄部ではなく、例えば手すりや柱等が鉄でできている場合に、サビや侵食などを防いだり改修したりする工事になります。こちらの工事は、マンションに比べて鉄部の面積もそこまで大きくはないと思うので、事前の診断時に判断する形になると思われます。
最後に防水工事です。これは言うまでもないとしてもいいほど重要な工事です。特にアパートなどの建物の場合は、マンションに比べて階層がそれほどないので、天井からの雨漏りや、その他の部分からの雨水の侵入などが比較的容易に起きてしまいます。そのためアパートにおいても防水工事はしっかりと行い、万全の居住環境を確保しなくてはなりません。
費用の相場
先ほどもお伝えした通り、アパートの大規模修繕では劣化の具合や経年数などによって、調整がマンションの場合に比べて比較的容易です。そのため、費用の相場も建物の状況によって様々異なる場合はありますが、先ほどご説明させていただいた大規模修繕の工事内容を全て行うとなると、アパートの場合は、一戸あたりおよそ200万円前後になります。ですので、10〜20の戸数となると、約2000〜4000万円の費用が目安となります。
こう聞くと、アパートの大規模修繕でも意外と費用がかかるということがわかると思われますが、必ずこの工事を一度にまとめて行わなければいけないというわけではないので、一度に出費することが難しい場合は、各工事をその時々に行って維持していくというのも一つの手だと言えます。
実施する時期
実施する時期についても気になると思われます。マンションの大規模修繕でも、どのくらいの周期で行えば良いのかということについて何度も触れてきました。しかし、結論としましてはやはり工事ごとの周期をしっかりと見極めて行なっていくということに変わりはありません。
およその目安として9〜15年ごとに行うという周期の一般的な指標が存在します。
しかし、しっかりと維持できている部分を年数だけで判断して行なったり、改修が必要な部分を周期の目安がくるまで放置するという安直な判断はどうか避けていただきたいところです。
各種の工事内容について、改修の目安等をこちらの記事にてわかりやすくまとめておりますので、ぜひこちらをご覧ください。
まとめ
今回は賃貸における大規模修繕についてご説明させていただきました。
大規模修繕工事は、「建物の資産価値を向上させる」ことが目的になります。オーナー様は所有物としての資産価値を向上させるだけでなく、居住者の環境自体の向上を行うことで、入居率や、長く住み続けてもらえるような物件になっていきます。そのため、アパートなどの賃貸だからと言って大規模修繕工事を行わなくても大丈夫だろうという考えは捨てていただきたいところです。適正な大規模修繕工事を行い、オーナー様も居住者も快い生活を届けられるようにしっかりと大規模修繕を知った上で行うようにしましょう。
なお、株式会社繕では、些細なことから、大規模修繕に関するご相談まで無料で受け付けておりますので、下記のボタンリンクよりお気軽にお申し付けくださいませ。