遡及項目
タワーマンション等の大型建築物は、建築基準法改訂の度に改築することが困難であるため、遡及対象となる場合が多いです。しかし、全ての項目において現行の建築基準法を適用すると、管理者に過度な負担を強いることになってしまいます。
そのため、マンションの大規模修繕においては、遡及が適用されない項目が複数存在します。今回は、その項目について解説します。わかりにくい専門用語については都度説明していくので、調べてもよくわからないという方はぜひ参考にしてください。
用語の定義
遡及の適用・不適用項目を調べても、専門用語がかなり多くよく理解できなかったという方もいるでしょう。ここではあらかじめ主な用語の定義について解説します。
既存不適合
既存不適格とは、建築当初では適法だった建築物のうち、その後の法改正等によって現行規定に適合しなくなっているもののことを指します。現行法に適していなくても、そのままの状態では問題はありません。しかし、大規模修繕・模様替えを行うとなった場合には、一定範囲内で遡及対象となるのです。
特殊建築物
特殊建築物とは、学校、病院、商業施設、遊技場、旅館、共同住宅などの用途で利用される、不特定多数や障害者等が利用する施設、多数が就寝する施設、災害危険性が高い施設等を指します。
遡及適応・不適応
先にも述べましたが、マンションにおいて遡及を全ての項目に適用した場合、管理者に過度な負担を強いることになるため、緩和項目が定められています。ここでは、遡及緩和の項目と、適用される項目について解説していきます。
構造耐力
構造耐力上の危険性が増大しない大規模修繕工事には、遡及は適用されません。この「構造耐力上の危険性の増大」とは、屋根でいえば、既存の屋根と比べて重い屋根にふき替えることなどが挙げられます。そのため、既存不適格のマンションの修繕工事では、既存の建材の重さを上回らないものが使われます。
石綿
建物を新築する場合は、すべての部分で石綿(アスベスト含有建築材料)を使ってはいけません。大規模の修繕・模様替えの場合には、工事対象とならない部分には緩和の規定があり、アスベスト含有建築材料の除去、封じ込め、囲い込みの措置が認められます。
その他の規定緩和
大規模修繕・模様替えでは形状や大きさが変わらないので、耐火要求や容積率などは適用されません。建設後に敷地の地域地区指定が変わり、耐火要件や容積率が既存不適格となっていたとしても、大規模の修繕・模様替えの場合は既存不適格のままで問題ありません。
専門家の助言も必要
これまでが、主な遡及不適用項目ですが、実際にそれぞれのマンションによって適用される細かい規定が異なり、全てを管理組合のみで把握することは難しいです。実際に大規模修繕の修繕計画を立てる際には、修繕コンサルタントや施工会社へのヒヤリングを元に修繕項目や使用する建材を話し合っていく必要があります。