高難易度修繕
タワーマンションの敷居が高いと言われる理由の一つに、その維持費が挙げられます。マンションの大規模修繕は、長期間、高い費用をかけて行われますが、俗にタワマンと呼ばれる高層マンションではその規模はとても大きくなります。また工事着工までの過程の難易度も高いです。
今回の記事では、タワマンの大規模修繕の内容と、難易度が高いと言われる理由を解説していきます。タワーマンションの新築、修繕を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
高難易度の理由
タワマンの大規模修繕が難しいと言われる主な理由は、「工事自体の難易度が高い」、「合意形成が難しい」、「高い費用と長い期間が必要」という3点があります。これらの注意点を把握しておかなければ、スムーズに修繕することは難しいです。
工事自体が高難易度
工事自体を行う際の難易度が高い原因は様々あります。
まず、高層マンションでは低層階、中層階、高層階で外壁や構造に違いがあることが多いです。そのため、階層によって工事内容が異なり、使用する建材や塗料にも違いが出てきます。高層階では更に風対策が必要であり、制振装置の整備もしなければいけません。そのため、通常のマンションよりも作業工程が多いのです。
また、タワマンの大規模修繕の経験がある施工会社の数が限られているという原因もあります。大規模修繕は主にその建物を建設した施工会社に修繕工事の依頼をする場合が多く、依頼先が限られてくるのです。
合意形成が難しい
通常の小、中規模のマンションの場合、戸数は多くても100戸であり区分所有者数が少ないため、修繕計画を立てる際に管理組合での合理形成が比較的スムーズに行うことができます。対してタワマンの戸数は100戸以上、多い場合1000戸以上にのぼるため、管理組合での決議の難易度が必然的に高くなります。
建築基準法により、大規模修繕に関する決議を行う際には「区分所有者及び議決権の過半数の合意」が必要であると定められています。大規模修繕の手続きを行う都度、合意形成をとることが弊害になってくるのです。
また、低層階と高層階では世帯主の収入に大きな差がみられるため、修繕積立金の設定にも留意が必要です。更に固定資産税も階層ごとに異なります。高層階では固定資産税が増税されるため、高収入世帯が多い高層階であっても修繕積立金の増額には反対意見が挙がることも多いです。
高い費用と長い期間
タワーマンションの場合、階層も戸数も多く、また修繕項目も増えるため修繕費用が高くなり工事期間も長くなります。
一般的な大規模修繕では、戸あたりの修繕費用は100万円と考えて良いです。それに基づいて計算すると、小、中規模のマンションでは、戸数50として5000万円で修繕が可能ですが、タワマンでは最低でも億単位で費用がかかります。
また、期間も2〜3年と長期間になります。一般的には大規模修繕の工事期間は1年ほどであるため倍以上の期間がかかるのです。修繕工事は、居住者だけでなく近隣住民にも負担がかかります。居住者は一時的に引っ越していただく場合もあるので、工事期間が長引くと大きな負担になります。また、近隣住民には騒音や異臭のトラブルにつながる可能性があります。
タワマン特有の工事内容
タワマンの大規模修繕工事では、通常のマンションの大規模修繕とは主に3つ異なる点があります。
まず外壁塗装等の工事に必要な足場ですが、通常下から足場を積み上げて作業する形になるのに対して、タワマンの場合屋上から吊り下げるゴンドラを利用したり、柱を組んでその間を移動させる「移動昇降式足場」を利用する場合もあります。そのため足場の費用も割高になります。
次にタワマンで必ず考慮しなければいけない「風対策」です。最も対振装置を取り付けているタワマンは未だ少ないですが、取り付けていない場合でも実際に強風によって揺れが生じている場合、構造の劣化が考えられるため修繕工事のタイミングで対応しなければいけません。
最後に、これはタワーマンションにもよりますが、資産価値や物件としての市場価値を高めるために、外観や内装、設備に独自性を持たせているタワマンが多いため、マンションによって修繕項目が大きく異なってくる場合があります。
まとめ
以上のように、タワーマンションが敷居の高いと言われるのは建設時だけでなく維持、管理の段階にも理由があります。建物の寿命を伸ばし、資産価値を保つには大規模修繕工事の実施は必要です。今後、タワマンの大規模修繕工事の事例が増えていくことで、施工会社間で工法の確率が進み、施工の効率化が図られていくことが予想されます。時代の流れに乗るためにも、必要であれば専門のコンサルタントにも頼りながら適切な維持、管理を徹底していくことが必要です。