大規模修繕の防水工事について気になるあれこれを解説!

耐久性の罠

マンションの耐久性向上を考えるにあたって、防水性能は要となってきます。防水機能が劣化すると、雨水がコンクリートや居住スペースに侵食し、ひび割れの原因になったり生活に支障をきたしてしまいます。建物の寿命を延ばすためにも、防水工事は大規模修繕の主要工事であると認識しておきましょう。また、防水工事は施工箇所や工法に様々なものがあり、それぞれの長所・短所を理解して建物に適した工法を選ぶ必要があります。

今回は、大規模修繕の要である防水工事について解説していきます。

目次

浸水による主な被害

大規模修繕において防水工事が重視される理由に、防水性能が劣化したことにより浸水が発生した場合の被害が大きいことがあげられます。具体的には主に3つの被害があります。

停電

浸水の影響で発生しうるトラブルとして一番重大なのは、電気設備の故障による停電です。基本的に電気設備は浸水の可能性の低い一階や地下に設置されていますが、防水性能の劣化により万が一浸水した場合、故障して建物全体の電力がストップしてしまう可能性があります。
停電の影響は多岐に渡り、給水ポンプが停止し断水が発生したり、エントランスやエレベーターなどの共用部分の設備の停止など、住民の生活に多大な被害が及びます。電気設備の故障は最悪の場合交換作業が必要になるため、膨大な修理費用がかかる恐れもあります。

建物の劣化を早める

木造であれ鉄筋コンクリート造(RC造)であれ、浸水は建物の構造部分の劣化を早める一番の原因です。
木造建築では、浸水によって木材が腐食することは容易に予想できますが、RC造においても浸水は天敵です。鉄筋コンクリートは、耐圧性能に優れたコンクリートと、引っ張る力に強い鉄筋を組み合わせた構造になっており、寿命も木造建築より長いのが特色ですが、注意しなければいけない点があります。それは、鉄部のサビです。鉄部が錆びると耐久性が劣化するだけではなく、膨張することでコンクリートにひび割れや剥離が生じて更なる浸水に繋がり、さらに劣化が促進します。

雨漏り

廊下や居住スペースに雨漏りが発生し、住民の生活にも支障が出ます。基本的に賃貸物件では、雨漏りに対する修繕はオーナー様負担になるので、費用面でも問題が発生しますし、何より入居者の快適な生活を妨げてしまいます。

防水劣化の原因と症状

建物の防水性能は永久的に持続するものではなく、必ず時間が経てば劣化していきます。そのため、長期修繕計画に定期的な防水工事を盛り込んでいく必要があります。ここでは、防水性能が劣化する原因となる症状について解説していきます。原因を理解して、どのような症状が見受けられた場合防水工事が必要であるかが分かれば、雨漏りや浸水が発生する前に、オーナー様自身で防水材の劣化に気づくことができる場合も多いです。建物の防水材の劣化状況を判断できるようになるためにも、しっかりと理解しておくことをおすすめします。

汚れや減耗

種類を問わず、防水剤に汚れや傷などができると防水性能は落ちます。もともと防水の仕組みは、水はけの良い素材で屋根や屋上などの表面を覆い、勾配を利用して排水するという原理になっています。しかし、汚れや傷が付くと水はけが悪くなります。藻やコケなどの汚れは浸透性が防水材よりも高く、汚れが溜まると水が流れていかずに浸透して留まってしまいます。また、雨風などが原因で防水材の表面が減耗してしまうと、凹凸ができて水が流れにくくなり、水はけが悪くなってしまうのです。天候や歩行の衝撃などの要因によって汚れや減耗は必ず発生してしまうため、定期的に修繕が必要なのです。
また、防水材の消耗が激しい場合に大きな傷や亀裂ができてしまう、「破断」が起きる可能性もあります。コンクリートや木材などの建材には、水分が含まれており、気温の上昇に伴って少なからず膨張します。防水材が消耗していると、膨張に耐えられずに破断が生じてしまうという仕組みです。また、水分の膨張による症状としては、防水塗膜のふくれ、剥がれもあげられます。これらの症状が起きると雨漏りにつながるほかに、修繕の際に新しい防水材を上から被せることができなくなるため、費用と手間が増えてしまいます。そうならないためにも、小さな傷がついている程度の段階で、防水工事を行うことが好まれます。

ひび割れ

下地素材に含まれる水分が、蒸発・乾燥することで硬化して、ひび割れが起きることもあります。ひび割れは、下地の素材がモルタルである場合に多くみられる症状です。
ひび割れが発生するとひびの部分から雨水等が浸入し、コンクリートや木材などの建材に浸水してしまいます。防水効果があるのは表面の塗膜部分なので、建材まで浸水すると建物内に水が染み出してしまいます。また、コンクリートや木材は水分に弱いので、構造部分の劣化も早まります。

防水工法の種類

屋根の防水には大きく分けて3種類の方法があります。塗膜防水シート防水アスファルト防水の3種類です。それぞれの特徴について紹介していきたいと思います。これらの方法で施工する箇所は主に、ベランダや通路、ルーフバルコニー、屋上、出窓がある場合は出窓のひさしです。ベランダは主に塗膜防水のウレタンが使用されます。最近は長尺シートと呼ばれるシートを張ることが多いですが、長尺シートには防水効果はありません。

塗膜防水

塗膜防水とは防水の機能が付いている塗料を塗ることにより、時間の経過とともに衰えていった、塗装による防水機能を復活させる方法です。ウレタン塗料とFRP(ガラス繊維強化プラスチック)の2種類があります。塗膜防水は2~3層に重ねて塗るため、3.0mmに達するので、シート防水に比べて防水層が厚く仕上がります。

ウレタン塗料

ウレタン防水は日本の屋上の防水方法の中で最も主流とされている工法です。ウレタン防水は液体状のウレタンを何層か重ねて塗ることにより、防水層を形成します。防水層を重ねることで雨の建物への侵入を防ぐ方法です。塗膜するウレタンは液体状なので、複雑な形をした屋根にも施工が可能であり、継ぎ目がないため継ぎ目からの雨水の浸入を防ぐことができます。

工法の違いについてウレタン防水工事の工法として「密着工法」と「絶縁工法」という2種類の工法が存在します。密着工法はウレタンの防水材を直接施工します。対して絶縁工法では防水材と床の間に通気マットを設置する方法です。ベランダなど面積が小さい場所は密着工法を行うのが一般的となっています。長所と短所をまとめてみました。

【長所】

・継ぎ目ができないため、そこからの雨水の浸入が防げる。

・工事の内容が比較的簡易なので工期が短くて済む。よって多大な人件費もかからず、材料自体も安いので結果として全体的な費用も安くなる。

・上から塗り重ねるので、古くなった防水材などを取り外す手間もかからず、撤去する費用もかからない。

【短所】

・比較的耐用年数が短い。

防水FRP

防水FRPとはガラス繊維強化プラスチックのことで、ガラス繊維などをプラスチックの中に含ませることにより、従来のプラスチックよりも強度を高めた複合材料のことです。軽量であり、耐久性、侵食性、耐候性に優れている。人が歩く場所でも防水層の上をトップコートで仕上げるだけで人の歩行が可能になるほどの耐久性を持っています。近年では屋上の緑化や屋上菜園の防水層として注目を集めています。しかし、耐用年数が短いのがネックとなります。また、ウレタン防水と比べると材料費の関係で価格も高くなってしまいます。長所と短所を比較してみます。

【長所】

・軽量でありつつ耐久性に優れている。

・乾くのが早く、工期が短い。

・施工完了後は人が歩いても問題がない。

【短所】

・施工時に異臭が発生するため、対策が必要。

・硬化後はプラスチックなので地震の揺れに弱い。

・再塗装の時に廃棄物がでる。

・伸縮性にかけるため、劣化した場合ひび割れがおこりやすい。

シート防水

シート防水は塗装防水のように塗るのではなく、防水シートを貼ることで雨水の浸入を防ぐ方法です。シート防水は塗装防水に比べると価格はさらに安く済ませることができます。しかし、耐用年数も長くはないです。液体状ではなくシート状の防水材のため、複雑な形状の屋根にはこちらの施工ができないことがあります。

施工に使われるシートは主に2種類あります。ベランダや通路などは長尺シートと呼ばれる装飾のあるシートを使うことがあります。しかし、この長尺シート自体には防水性能はありませんのでご注意ください。塩化ビニールシート防水塩化ビニールシート防水は塩化ビニールの樹脂で作られた防水シートをプライマーで屋根に貼り付ける方法です。現在のシート防水の主流はこちらの塩化ビニールシート防水です。塩化ビニールシートの厚さは1.5mm~2.5mmとなっており、ゴムシート防水と比べると厚い防水層が出来上がります。長所と短所の比較を行います。

【長所】

・施工後すぐに人の歩行も可能。

・紫外線や熱に比較的強い。

・物が置ける(塗料を塗布した床に物を置くと、表面が傷ついたり、物を持ち上げた際に塗装が剥がれる場合がある)。

・色が選べる。

・他の施工に比べて安い。

【短所】

・シートという形状なので、平らな屋根にしか利用できない。

・耐久年数が10~15年と比較的短い。

・シートの重なり部分に高い施工技術が要求されるため、施工不良が起こりやすい。

定期的な大規模修繕を

建物の寿命を伸ばし資産価値を維持・向上させるために長期修繕計画に基づいて修繕工事を行うのが大規模修繕ですが、その主な工事内容は防水工事の他に2点あります。その2つが、「外壁塗装」と「配管工事」です。これらは修繕工事を行うにあたって防水工事と同様に重視するべきポイントなので、最適な大規模修繕を目指すためにも十分な知識を備えておきましょう。

本記事と同様に、外壁塗装と配管工事についても詳しくまとめた記事があるので、ぜひ参考にしてください。

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