大規模修繕の着工・竣工を延期する場合とは?

工事期間が伸びる場合

大規模修繕に限らず長期間にわたって行われる工事には、スケジュールの変更はつきものです。施工会社と直接やりとりする施工委員会などは、工事延長や延期の理由について詳しく把握できますが、入居者に関しては工事が長引くことに関してかなりストレスに感じてしまいます。入居者との間でトラブルが発生するのを防ぐためにも、工事期間の延長はできるだけ避けたいところです

ここでは、工事延長の主な原因となる2つの事項をご紹介するので、大規模修繕を行う際は以下に気をつけて進めていきましょう。

目次

設定期間はあくまでも目安

マンションの大規模修繕工事は、基本的にマンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るための「予防修繕(不具合を生じる前に修繕する)や改良改善」を工事なるべくまとめて効率よく、計画的に実施することであり、その他の小さな工事なども含めた資金計画が長期修繕計画になります。

長期修繕計画では、建物の劣化状況を見極めたうえで、各工事の修繕時期を設定しております。予定されている年度に必ず大規模修繕工事を実施しなければいけないのではなく、おおよそこの時期に大規模修繕工事を実施することが望ましいという計画なのです

大規模修繕の延長は可能?

国土交通省は、大規模修繕工事に関する「長期修繕計画作成ガイドライン」の中で、大規模修繕の周期を12~15年程度としています。

一般的には大規模修繕は12年で1回行うものとして、長期修繕計画が作成されている場合が多いです。しかし、12年という数字は目安にすぎず、建築構造物はその環境によって劣化の度合いが異なるのが普通です。例えば、海に近い立地で塩害が考えられる地域と、雨や日照の標準的な地域では建物の劣化の進行には差が出ます。使用されている材料の性能による影響も大きいです。シーリング材などは高耐久タイプを使用することにより、修繕周期を延ばすことが可能です。マンションで大規模修繕が必要となる周期は、環境や使用されている材料によって異なるため、一律で修繕期間を決めるものではないのです。

もちろん、管理組合の財政の問題も関係してきます。12年周期での大規模修繕では無理が生じるのであれば、延ばす手立てを考えるべきです。例えば、使用する材料の高耐久化を図ることで、従来の12年周期を、16年~18年に長周期化することは可能です。建築後36年の場合、12年周期では大規模修繕を3回実施することになりますが、18年周期に延ばせれば2回になります。平均的には、1住戸当たり100万円から130万円といわれる工事ですから、100戸のマンションではこれで1億円以上の予算が生まれます。

工事内容の変更、追加

大規模修繕において、修繕計画を立てるタイミングではわからなかった主要部分の破損や劣化が、足場を組んで実際に施工を開始してから発覚して、追加の工事について施工業者から提案されることがあります。その際は、劣化の状況や資金を考慮して必要だと判断した場合は工事を追加することをおすすめします。しかし、管理組合側から設備のグレードアップや工事の内容の追加を工事期間中に要望する場合は、慎重に検討しましょう。追加工事によって大幅に工期が延長することになれば、資金もそれだけ必要になりますし、入居者の不満も増大してしまいます。安全性に関わる作業以外は、工事の期間中に追加することはあまりおすすめしません。

もしも行う場合は、必ず入居者と組合員の合意を得た上で行いましょう。

天候による工事延期

外壁塗装や防水工事などは、行う場所が屋外や屋上であるため、天候によって延期しなければならない場合があります。天候によるスケジュールの変更自体は防ぐことはできませんが、工事の進捗状況を常に把握しておくことが重要です。定期的に施工業者から進捗状況の報告を受け、工事予定の変更等がある場合は業者と打ち合わせを行ったあと、入居者に必ず周知するようにしましょう。

延期してしまう場合に

目安の時期はもちろん大切ですが、今の劣化状況や資金計画に応じて各マンションで大規模修繕工事の実行時期を検討することが重要です。そのため「長期修繕計画で予定されている大規模修繕工事が遅れている」「12年周期で計画している大規模修繕工事に着手できない」という理由で焦る必要はありません。

予定されている時期が近づいてきた段階で、まずは建物の劣化状況を調べ(建物調査診断)たうえで、大規模修繕工事の実施時期を検討すれば良いのです。その調査結果に基づき、すぐに修繕工事をするべきなのか、状態が良好であれば、修繕工事の時期を少し先延ばしにすることも可能ですので、その判断が必要だと考えます。

区分所有者の同意

適切な判断のために一般的に12年と推奨されている大規模修繕の周期を見直せれば、管理組合の財政にもメリットが生まれます。例えば、足場の要らない中規模修繕を組み合わせ、材料の高耐久化を図れば、周期の延長が可能になることもあります。しかし、修繕の必要性の判断には多くの専門的知識も必要なのは言うまでもないです。管理会社や施工会社が管理組合に深く入り込んでいる場合、大規模修繕の周期に関して、その意向が働くことも多いです。利益相反にならないために、区分所有者である住民のチェックがますます重要になってきます。

劣化診断などでは、専門家による目が確かに重要です。しかし、大規模修繕を12年周期とすべきか16年周期とすべきかなど、財政に大きな影響を及ぼす判断はあくまで、修繕積立金を負担する組合員の判断です。一概に周期を延長すればよいというわけでなく、快適な居住環境の確保、資産価値の維持、必要な設備の性能向上を考慮したうえで、適切な判断をしていきましょう。

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