居住者アンケート
マンションの大規模修繕を行うには、住民の協力が必要不可欠です。修繕費用は毎月の修繕積立金によって賄われ、工事期間中には騒音や水道やガスの一時的利用停止を住民に受け入れてもらう必要があります。そのため、修繕内容は居住者の意向に沿い満足していただけるものにしていくことが大切です。今回の記事では、大規模修繕を成功させる秘訣となる「居住者(住民)アンケート」について、実施するメリットや盛り込むべきアンケート項目について詳しく解説していきます。
居住者アンケートとは?
大規模修繕は、管理組合がスケジュールや修繕内容を含めた長期修繕計画を立てて、12〜15年周期で行われるマンションで最も大規模な工事です。遅くても1〜2年前から修繕コンサルタントとの契約や施工会社の選定を行い、パートナーと計画を立てます。その上で、着工の3〜4ヶ月前に、建物の状態を把握して必要な工事内容を見極めるために、専門業者に「建物調査」を依頼します。建物調査は、目視やテストを行い、防水、外壁、共有部分等の、大規模修繕の要となる部分の劣化状況を調査します。建物調査について詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。
建物調査はプロが基本的に行うものなので、修繕箇所の見落としは基本的にはありません。しかし、いくら建物調査に精通しているとはいえ、外観や共有部分の調査がメインとなるため、細かい部分や、いざ着工してみなければ見えない内部の部分については、劣化を見落としてしまうこともあります。
そのようなトラブルを防ぐために、実際に住んでいる住民に、日頃感じている不具合を聞き込みする住民アンケートが重要になってくるのです。業者が精密な調査を行ったとしても、日頃生活している住民の方が、各部屋や共有部分の細かい部分の劣化状況を把握できている場合もあるのです。住民アンケートとは、そのような建物調査での見落としを防ぎ、大規模修繕工事を十分な内容に仕上げるためのものです。
アンケートのもう一つの目的
住民アンケートを行う目的は、劣化状況の把握漏れを防ぐこと以外にも、住民の皆様に大規模修繕への意識を持ってもらうということも含まれています。冒頭にも述べましたが、大規模修繕工事を行う際には居住者の協力が必要不可欠です。実際に、修繕積立金の額や騒音によって管理組合と居住者の間でトラブルが発生してしまうことも少なくありません。
トラブルを防ぐためには、居住者に、大規模修繕への理解と満足を得てもらう必要があります。実際に工事に関わる管理組合に深く関わりのない居住者の中には、大規模修繕工事に対して理解していない人もおり、必要性に疑問を持たれてしまうと、不信感に繋がってしまいます。そこで、実際に普段感じている建物の不具合をアンケートによって吸い上げ、居住者に実感してもらうとともに、修繕工事に対して関わりを少なからず持ってもらうことで、興味関心を持ってもらうきっかけを作ることができます。また、工事内容についても、竣工後に不具合が残り満足していただけない内容で終わることを防ぐことができます。
住民アンケートは、建物調査での見落としを保全するとともに、管理組合と区分所有者間でのトラブルを防ぐ1番の方法となるのです。アンケート項目のポイントアンケートを実施するにあたって、必要な質問内容がわからないという方も多いでしょう。ここでは、住民アンケートに盛り込むべき質問のポイントを紹介していきます。
居住空間
前述したとおり、アンケートは住民にしかわからない不具合がある箇所を調べるものです。そのため、まずは各住戸に関して、具体的にどこを改善すべきなのか明らかにできる質問項目としましょう。最低限、次の箇所について質問で触れるべきでしょう。
・玄関ドア
・窓サッシ
・バルコニー
・電気、給排水設備
それ以外の共用部
住民が共同で利用する供用部についても、アンケートで改善すべき場所を聞きましょう。主な供用部には、次の場所が挙げられます。
・廊下、階段
・エレベーター
・駐車場、駐輪場
・外灯
・ごみ集積所
おすすめのアンケート形式
続いて、より多くの回答を集めるためのポイントを見ていきます。アンケートのポイントは、「簡単で具体的な質問に選択方式で答えてもらうこと」です。たとえば、結露が発生しやすいか知りたい場合は、「はい・いいえ」の二択で回答してもらうとよいでしょう。そして、「はい」と回答した方にのみ、結露が発生する場所として「窓のサッシ・家具の裏・畳、カーペットの下」などの選択肢を提示します。これにより最低限の手間でアンケートに答えることができ、回答率アップを期待できるのです。また、どうしても記述が必要なものに関しては、回答例を入れておくと記入してもらいやすくなるでしょう。なお、建築の専門用語をなるべく避けてアンケートを作成するのもポイントのひとつです。
どうしても専門用語が必要な場合、補足説明を入れておきましょう。アンケートをわかりやすいものにすることも、回答率アップにつながります。